劇場アニメ化でアニメオタクが分断される危機

今年は特にTVアニメの劇場アニメ化が多く見られた年だった。

しかしながらKADOKAWAの作品において絶対に見過ごすことが出来ない重要な転換点があった。

上半期公開の『ソードアートオンライン』・『魔法科高校の劣等生』と

下半期公開の『ノーゲーム・ノーライフ』・『Fate Heaven's Feel』の両者の取り扱っている内容の変化である。

 

前者は原作のライトノベルもアニメも広範な人気を得ているメジャー作品だ。

劇場版の内容はオールスター出演かつお祭り的雰囲気で本編とは独立した物語であった。

 

それに比べ後者はコアでありながらもファンの絶大な支持を集めているマイナー寄りの作品だ。

こちらの劇場版の内容は、確かに本編から離れているが完全に独立しているとは言えず

それなくしては本編の理解度の深さに影響が出るくらいに本編に近い関係にある。

 

あたかもKADOKAWAがアニメの放映するテレビ局から脱却するための「実験」を今年行ったようにも思えた。

 

長期的なビジネスの観点から見たKADOKAWAの戦略には、それはそれは興味があるが

筆者が問題にしたいのは本編を劇場アニメに移行させていく動きがこれからアニメオタクに与える影響だ。

 

劇場アニメなので視聴するためには当然映画館の入場料を払わないといけない。

高校生までの青少年が観に行くとして各種割引を適用しても1500円程度はかかるだろう。

働いている社会人からすれば何でもない金額だが、親からお小遣いを貰っている青少年からすればたかが一回の映画鑑賞でとんでもない負担だ。

いくら作品が大好きでも映画を観に行くことを躊躇う若者がいても不思議ではない。

ここで年代によるアニメ体験に差が出てくることが危惧される。

 

劇場アニメなので当然映画館で上映されるわけだが、日本全国で簡単に行ける距離に全ての映画館があるわけではない。

そしてアニメオタクの社会人にとっては労働時間の関係で映画館に足を運ぶことが出来ない場合もある。

この地理的・時間的制約の有無が各人のアニメ経験に差を産むだろう。

 

既にアニメが深夜の時間帯に追い込まれて、国民が共有できるアニメ作品が激減しているわけだが

本編の劇場アニメ化への移行の流れが、アニメオタクの共通体験を奪うアニメ作品の蛸壺化を進行させているように思えてならない。

 

しかしながら本編の劇場アニメ化には希望的な側面もある。

それは別の機会に語りたい。