歩の意地 アニメ『アンゴルモア元寇合戦記』前半感想

放送開始当初ノーマークだったが、今では毎週の放送が楽しみで仕方がないのがこのアニメである。

鎌倉時代元寇に立ち向かう対馬の人々を描いた作品で、当然時代劇のような古めかしい絵柄や演出をするものと思っていたが

現代風のスタイリッシュなそれと組み合わさって面白い画面に仕上がっている。

 

現代といってもオタク文化の最先端である異世界転生ものの雰囲気がするのである。

主役である朽井迅三郎は、政敵に嵌められて対馬流罪となった鎌倉武士である。

一つの人生から見れば流刑に課せられた転落の後半生である。

しかし鎌倉武士としての武芸や知識を披露して現地の人の尊敬を勝ち取っていく様や、遠く離れた対馬の地で

異形のモンスターの如く日本人とは外見や装備が大きく異なる元軍との戦い、

これらが転生を果たし第二の人生を生きているように見せるのだ。

 

この主人公は戦いの時は熱血で勇ましいのだが、普段は感情を出さない乾いた性格である。

政治を考えないというのが、その性格を裏付けているのだろう。

彼の懸命ではあるがその場限りの生き様、それは大局を考えない将棋のコマの「歩」だと政敵から嘲笑された過去がある。

しかしその「一所懸命」は元の大軍を迎える対馬では、彼の強さとして現れるのだ。

兵力で圧倒的な元軍が相手なので常に日本側は敗勢である。

そこで和睦や降伏を考えず、持てるものを全て用いて戦うのが彼の戦闘スタイルである。

外部状況から自らの行動を判断する政治という行動形式を身につける前の、人間の動物的側面の強さと言えよう。

それは常に戦いの場に身を置く武士に通じるものがある。

しかし戦功を重ねて立場を築いていくと待ち受けているのが政治である。

彼は戦う人間であり、人に使われて「戦わされる」気質の人間でない。

それに関して彼の前途が危惧されるような描写があるが、物語はまだ前半なのでこれからの展開は未定である。

 

この物語で彼には生存して安定的な仲間となる者がほとんどいない。

OPに登場する味方は既に結構な割合で死んでしまっている。

 

作品で登場人物の命に優劣は付けられておらず、主人公の朽井迅三郎もおそらく死ぬはずだ。

物語なので一応便宜的に各人に名前や役割が与えられているが、作品内で全ての命を等価に扱うことで

対馬の無名の人々の勇敢さを表現したいのがこの作品の狙いだろう。

 

歴史的には無名だった人々を甦らせることも出来る創作の可能性を感じた作品である。

 

 

 

TVアニメ「アンゴルモア元寇合戦記」公式サイト
http://angolmois-anime.jp/