山根綺さんの覚悟の話

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山根綺さんは、過去にデメキンの渾名が付けられたほどの

大きく見開いた目が印象的な新人女性声優である。

今回は『山根綺のゆるっと綺譚』第18回の前半パートで披露されたトークを紹介したい。

声優志望のファンからのお便りに答える形で語られた彼女の「覚悟」である。

 

この仕事は難しい。この難しさっていうのは何かと言うと、自分で決められることが少ないんですよ。

演者って自分で決断することがあまり出来ないっていうか、基本的にはもう決めてもらう側なんですよ全部が。

彼女は安易に歓迎する言葉を発さない。

語るのは、お膳立てされた、悪く言えば不自由で縛られることを宿命付けられた声優の本質だ。

それは台本や音響監督のディレクションへの服従から始まり、

オーディションや仕事を好きに選べない事務所所属の声優の立場にまで亘る。

 

何かあった時とかマネージャーさんとか他の方に責任を取ってもらうしかないし、

本当に自分で自分の舵が取れないんですよ、この役者の仕事って。

具体的では無いので筆者の推測でしかないが、声優の芸能人としての側面が関係していて

保護されている代わりに演者はパフォーマンスの結果に干渉出来ず、責任が取れないということかもしれない。

 

だけどそこをちゃんと理解した上で、"上手く行かないのが当たり前"、"自分がやりたいことが出来ないのが当たり前"っていう日々を

覚悟できるのであれば目指していいと思います。

演じることが他者の支配の下にあっても自分なりに意義を見出すことかもしれないし、

敢えて不自由さの中で自由を見つけていくことかもしれない。

声優志望者へ忠告していることは、彼女が向き合っている現状なのは言うまでもない。

ではどう向き合っているのか、そこまでの言及は無かったが

堂々と語る彼女に不満や諦めなどはあるはずもなく、

声優という職業に積極的な意義を日々模索しているのだろう。

 

私は海に例えるんですけど、声優という職業って、自分がボートに乗っててゴールが見えないんですよ。

だけどずっと漕ぎ続けなきゃいけないの。

で、運が良い人とかたまたま何か見つけられる人が岸に辿り着くことが出来るわけなんですけど、

「元々羅針盤持ってます」、「コンパス持っちゃってんだよね」とか、

永遠に漕ぎ続けられる怪力を持ってる人が偶にいるんですよ。

そういう人は、何も持ってない人(自分)に比べて辿り着きやすいじゃん岸に。

そういう人でも海には潮の流れがあって、こっちに潮が流れてたら

どんだけ漕いだって前には進めないじゃん。

そういう世界だと思って下さい。

次に、彼女は声優としての成功を左右する運を語っている。

そもそも自分が成功するような明確な道筋が見えるものではなくて、

声優業界で勝ち抜くための適性や武器にも個人差があって、

それらを持ち合わせた天才にさえ勝利の道を閉ざすこともある運である。

その作用は、彼女に声優業界が努力や才能が必ずしも報われる場所ではないと冷徹な認識をさせている。

彼女はまだ新人なので期待より不安は大きいはずだ。

しかし何もかも確定させられた宿命を持つ声優だからこそ、

不確定な運命に挑むことを彼女は楽しんでいるようにも思えたのだ。

志望者に求める覚悟は、彼女がそれを胸に世界に対峙してる覚悟であり、

この先も彼女は声優の本質に挑むことに足掻き、運命にも足掻き続けるだろう。

その道のりをファンが感動し、彼女が納得出来るようなものになればと祈っている。