なぜシミュレーションRPGが、RPGの中で斜陽のジャンルとなっているのか考えていきたい。
シミュレーションRPGは、コマンド式RPGの恩恵を多大に受けていた。
コマンドが入力されるまで戦闘の時間が停止する、それがコマンド式RPGの特徴である。
戦闘でのキャラクターの具体的な振る舞いを描かないことで
却ってプレイヤーに想像力を働かせた利点もあった。
シミュレーションRPGで自陣のユニットを操作する時、敵味方の他のユニットが動かないことを
今まで自然に受け入れることが出来たのはそのせいである。
しかしゲーム機が進化してキャラクターや背景のグラフィックが向上したことにより、
その不自然さが際立つことになった。
自分の操作キャラ以外静止しているゲーム画面には、戦闘の没入感や緊張感が無い。
リアリティが整えられていく中でコマンド式RPGの加護が解かれてしまったのである。
もしも上記の時間的な矛盾が解決された理想的なシミュレーションRPGがあったとしても
一人のプレイヤーが複数のユニットを操作し、複数の敵を相手にすること自体に無理がある。
リアルタイムでそれらを完璧に処理するのは不可能である。
そうすると自分の操作するもの以外のユニットの人間らしい操作を完全にAIに置き換える必要があるが、
それが実現した作品は無かった。
これまで敵が手強かった記憶があるならば、それは敵ユニットのパラメーターが高かったり
強ポジションを占める配置によるものでしかない。
終盤になると数でゴリ押しで、ラスボスはタコ殴りという単調な展開になりがちであった。
仮にAIがプレイヤーの動きに変動して人間並に賢くなったならば、ゲームとしては難しくなりすぎるので
新規プレイヤーの参入を阻むことになるだろう。
シミュレーションRPGはコマンド式RPGのコマンドが具体化された戦闘とも言える。
複数のユニットがあって、マップにマスが描かれれるのならば
ユニット同士の位置関係や戦闘コマンドの射程が可視化されることになる。
手順が増えればやり甲斐を感じるプレイヤーもいる一方、煩雑と感じ敬遠するプレイヤーもいるだろう。
様々に簡略化されたソシャゲに慣れた今時のプレイヤーが、シミュレーションRPGをプレイする動機が全く想像できない。
以上はつまり、通常のRPGのコマンドが持つ抽象性が
シミュレーションRPGのフィールドに具体的に展開されたことによる弊害なのである。
今の大作シミュレーションRPGの作品はファミコン時代から続くようなシリーズしか発売されていない。
時折突然変異のような作品がヒットすることもあったし、これからもあるだろう。
しかしそのゲーム性は現代では通用せず復権する未来は無い。
尊重はするが今熱心に取り組むものとしては除外する、それは通常「古典」と呼ばれているが
シミュレーションRPGも古典的存在となったのである。