伊達さんは普段からアイドルを演じているところがある。
仮にプライベートな一面を見せる時でもアイドルの雰囲気は消え去る事はない。
しかしそんな彼女のベールが剥がされた瞬間があったのだ。
『伊達さゆりのあと8cmは伸ばせます!』第16回で、番組に採用するコーナーを募集した企画で
リスナーから体力テストを提案された時の伊達さんの反応だ。
そのメールを読む彼女の表情は曇り、テンションの下がりようも目に見えるほど明らかだった。
番組を覆っていた楽しいムードは徐々に消え、彼女の地が現れ始めたのである。
やりません!絶対にやらない!何が何でもやらないんだから!
せっかく考えて送って下さったんですけど、私本当に駄目なのよ。
だってさ、好きな人います?逆に聞きたい。
『体力テストだ、よっしゃ』っていう人あんまり見たこと無いよ。無いの。
本当に嫌です。本当に嫌なの(笑)
企画のコーナー名ガン無視でゴメンね。
やりたくないでしょ。握力とかだったらいいですよ全然。
私、本当何かね、タイム測られるの苦手なんですよ。嫌いというか。
ゴメンね。これだけは言わせて。嫌いなんですよ。
何かこう、測られたりとか、自分の技術面、能力とか、それこそ生まれ持った能力、
身長じゃないよ、身長は違うんですけど、
なんかそれを数値化されたりとかするの、(もう)いいって感じになります。
だって、無理無理無理無理無理無理無理。
伊達さんは嫌いだったり苦手な物があったとしても、
必ず配慮してオブラートに包んで否定的な言葉をそのまま口にはしない。
筆者は少なくとも彼女の個人ラジオでほとんど聞いたことがない。
そんな彼女が否定を超えて拒絶の意思を言葉にしたことが衝撃だった。
伊達さんと言えば優等生のイメージで、それは学業を始め
数字で測られるような様々な分野で上位を獲得してきた雰囲気を感じさせていた。
しかし当の本人は人を数字で測る物差しが大嫌いだったのだ。
数字で計測されて残った結果は他者との優劣を意識させ、そこで生まれてしまう優越感やコンプレックスを好まないのかもしれない。
あるいは、数字で測る基準、言い換えれば既存の価値観に忠実であることを尊ばないということかもしれない。
それらを補強するようなインタビューは最近公開された。
伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第9回 初めて参加したライブで記憶に刻みつけられた きゃりーぱみゅぱみゅさんの「もったいないとらんど」(中編)
https://febri.jp/topics/series_sayuridate_9-2/
一番好きで成績が良かったのが、人と違うことが評価され尚かつ他人に理解されなくてもいい「美術」だったのである。
数字が関与する科目ではないのは言わずもがなである。
とすれば彼女が芸能界の声優を志望したのも必然だったのかもしれない。
成績やノルマに追われる社会人とは違う「外れ者」が目指す職業だ。
そこは数字で測られない個性を競い合う場である。
僅かに姿を覗かせてきた、優等生から逸脱する曲者のイメージ。
彼女の本当の理解は一筋縄ではいかないものだと思わされたのである。