抜け駆けのフラスタ

オタクと自己顕示は切り離すことが出来ない。

声優オタクも同様で、推しの声優に認知されようと模索し、やがて巧妙な方法を発見した。

それがイベント会場で飾られるフラワースタンド、通称フラスタと呼ばれるものである。


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店舗や式場に贈られるシンプルな花輪に留めておけば、オタクも責められることは無かったかもしれない。

しかしオタクの自己顕示の性はタガが外れてしまったようである。

フラスタに付随するのは贈り主としての自分の名前や代名から始まり、キャラクターではない演者の似顔絵に、

更には自筆のメッセージまで添えられてあって自己顕示のてんこ盛りと言った様相だ。

ここまで自身を特定される要素を盛っていれば推しに認知されるのは間違いない。

しかもそのフラスタの写真を推しの声優がSNSに上げることまでしてくれるのだ。

それは、推しによる確実な認知の証明と言ってもいい。

ファンとしては昇天しそうなほどの満足感を覚えるだろう。

 

しかし筆者はそう遠くない時期にこの抜け道は塞がれると考えている。

理由は2つある。

最初の理由は、イベントに参加した他のファンが抜け駆けを許さなくなるからだ。

フラスタを贈った者だけが特別扱いされている現状の認識が広まれば、

認知の格差に対して他のファンが黙ってはいないだろう。

そしてフラスタをめぐる認知合戦が過熱するほど様々なトラブルの発生も予想される。

 

次の理由は、贈られるフラスタの数と装飾の違いでキャラクターや演者の人気の差が可視化されるのを防ぐためだ。

声優のモチベーションに関わる問題であり、共演者同士の関係にも悪影響を与えないために配慮されなければならない。

 

以上の理由でフラスタは何らかの制限を受けるだろうが、

フラスタ自体が禁止されるとは思わない。

その外堀を埋められて行くとして、まずは声優がフラスタの写真をSNSに上げる習慣は無くなっていくはずだ。

ファンの想いは受け取るが内容までは第三者に共有させない、

つまりはフラスタをファンレターと同じような扱いにすると言うことだ。

 

しかし、しばらくはフラスタに自分の認知を託すファンたちのボーナスタイムは続くのである。

彼らはもちろん、贈られた側の声優が責められるような事態でさえ起きることも覚悟しておきたい。

対策を練るにはある程度の事例の集積が必要なわけで、

解決の日を迎えるまで我々はオタクの醜態の数々を目にすることになるのだろう。