「LIVE」に侵食されストーリーを失いつつあるアニメ

ただでさえ複雑な話や構成のアニメは視聴者に好まれていないのだが、昨今は作品に占めるストーリーの重要度の低下を感じることが多い。

大きな要因として、アニメオタクがバックボーンより現在の有り様をキャラや世界に求めるようになったことだ。

原作キャラに動きと声を付けて立体的な存在感を高め宣伝として活用したい制作側と、

作品世界の歴史や背景の理解を敬遠しアニメ作品を浅く消費したいアニメオタクの思惑が一致してしまったかのようでもある。

 

アイドルアニメやバトルをメインとするアニメにおいて、視聴者を熱狂させているのは舞台や戦場でのキャラの活躍であって

オマケ扱いのストーリーではない。

それらのアニメのストーリーらしきものは、ソシャゲのイベントと同じでキャラの今を輝かせるものでしかない。

ストーリーとは時間を巻き戻せばキャラクターや世界が成立するための背景や歴史であり、

時を進めればキャラクターと世界の間の翻弄と変革の関係性を描いた未来と言える。

そのストーリーを閑却して既に完成されたパフォーマンスを持つキャラたちによる舞台での活躍、それこそが「LIVE」である。

歌唱やスポーツと同じくその前後は関係なくステージや試合の結果のみが全てなのだが、鑑賞者にとっては抗い難い魅力を持つものだ。

 

しかしながらアニメとは言え広義では文学なのだからストーリーは必要だ。

少数の存在でありながら円盤の売上は圧倒的な「LIVE」のアニメ作品が、これからアニメ業界や視聴者に与える影響は恐ろしい。