何度も同じアニメ作品を見返したり仲間と作品の感想を語ることは、経済活動とは言えない。
そうすることで金銭が発生しない、つまり「消費」が行われないからである。
しかしオタクにとってその経済的に無為と思われる時間こそが、彼らにとってはかけがえのないもので
見識を深め己をオタクたらしめんとするものだ。
とは言え作品の製作者は、顧客の満足度以上に利益を求めたいものである。
そこでオタクの時間をマネタイズする様々な方法が考えられた。
アニメの劇場上映などはその最たるもので、今までオタクが購入した円盤を何度も繰り返し見ていた時間を、観賞した回数分だけ利益にすることを可能にしたのだ。
週毎に変わる来場者特典やキャスト登壇回を設けることで、複数回に亘って観賞させる手段も整えている。
先行上映、配布会、コラボカフェなどオタクの嗜好を擽るような期間限定や時限式のイベントの頻繁な開催はもはや当たり前になっている。
自分の人生と時間を費やした経験なのだからそれらのイベントに参加することを有意義に感じるのは当然である。
しかしそれらは自分が生み出したものではなくコンテンツの供給者の企画によるものであることを忘れてはならない。
そこには只の消費者として踊らされ自分の時間を主体的に使うことを放棄し、オタクであることの本質を失う危険性があるのだ。