Re:ゼロから始める異世界生活のレムと言えば作品内はもちろん、他の作品のヒロインとの比較においても圧倒的な大人気女性キャラである。
リゼロの設定は美少女ゲームのそれを借りていると言われており『死に戻り』はプレイヤーがENDを迎えた後のリトライを模したものだが、
死ぬことが求められているので劇的なドラマがそこには生まれる。
死に戻ることで主人公スバルはレムと何度も邂逅を果たすことになる。
初めは不審のためあっけなく彼女に排除され殺される。この時点では彼女と感情的な繋がりは全く無い状態だ。
その後死に戻ったスバルの未来を知ってしまったが故の中途半端な言動が、
彼女の過去のトラウマを刺激し不審を明確な敵意に、やがて憎悪に変えてしまう。
非力なスバルはまたも殺されてしまうのだが、ようやく二人の間に否定的なものとは言え感情的な繋がりが生まれたのである。
好意的な心情に変化することなくスバルの死と共に生を消すレムの敵意と憎悪剥き出しの有り様、これはツンデレにおける最強の「ツン」ではないだろうか?
普通のツンデレヒロインと言えば主人公の働きかけとイベントによってデレて陥落するものだ。
しかしレムはその生涯においてスバルに対して否定的な態度と殺意を貫き通したのだ。
ここで死に戻りの設定が活きてきて、それは彼女の一つの側面としてスバルそして視聴者に記憶されることになる。
いくつもの停滞と死に戻りを経つつ彼の努力はやっと事態を好転させる。
最終的にはレムたちを救うことだったが、その過程で周囲の人を必死に助けようとするスバルの姿がレムの心境を変化させたのだ。
共闘することになったスバルがレムを助ける場面があり、彼女がようやく心を開き好意を抱くようにもなった。
スバルが渡り歩いたそれぞれの生涯から見えたレム、しかしそれは彼の行動に反応するパターンといった軽々しい存在ではない。
何度も死に戻ったスバルに対峙する者は、単なる並行世界の中の一つの存在ではなく
彼に呼応するようにまるで複数の人生を積み重ねたような人間性の深みを引き出された存在となる。
11話、闘いが終わり病床でスバルが未来の価値を誇らしくレムに語る場面、本当に何度も「明日」を目指した彼だからこその説得力と希望に
レムは涙を流し恋心を抱くようになる。
自分を殺した相手が「デレ」る、これは視聴者にとって至上の瞬間だろう。いくつもの死を乗り越えた末に完成したツンデレだ。
当事者にとっては悲劇である死に戻りの設定ではあるが、視聴者には各キャラの複数の生涯の色んな側面を見せてくれる贅沢なシステムだ。
こうして見てみると元々の魅力をレムが具えていたのは違いないのだが、
彼女の人気の最大の功労者は何度も自らの命を使いその魅力を引き出した主人公スバルと言えるのだろう。