物語構造による幼なじみが負ける理由

好きな相手と幼少期を共に過ごしたことは、恋愛において大きなアドバンテージである。

最近の漫画やアニメでは、その有利性を活かせず主人公の愛を勝ち取れない幼なじみが後を絶たない。

 

幼なじみが抱く恋愛感情は友情の延長上にある。

想いが燃え上がり独占欲に至っている状態だ。

しかし物語の構造が相手を独占することを許さないのである。

 

読者や視聴者は、自らの分身である主人公にハーレムの主であってほしいと願っている。

なので彼が一人の女性だけと恋愛を完結させてもらっては困るのである。

作者としても彼女一人との恋愛の過程を描写するとなると、物語が恋愛ものに寄ってしまうリスクもあり、

また様々なヒロインと主人公の恋愛関係を描くことが出来なくなる恐れもある。

 

よって幼なじみのヒロインはハーレムを成立させるべく、主人公を支えるベースとしての愛を担うことになる。

彼女は母親、あるいは肉体関係のない正妻ポジションに立つことになる。

既存の愛情は、多数の女性の新規の登場に打ち勝てなかったのである。

 

しかしながら時々矩を踰えて主人公に告白する幼なじみキャラがいる。

やはり見事に振られてしまうが、それは二度と主人公と恋愛関係に戻れないことを意味する。

恋破れたとしても物語では、二人だけの友情を超えた特別な関係として綺麗に描かれがちであるが、

それは彼女に本来の役割を再認識させるべく罰が下されたようでもある。

 

物語に規定されている彼女の恋愛行動ではあるが、博愛や一方的に尽くすだけの代償を求めない愛は

決して報われることが無いことを教えてくれるのである。