【追加版】虹ヶ咲アニメスタッフの本気度がわかる!小ネタ元ネタ解説動画【字幕解説動画】
https://m.youtube.com/watch?v=YxXBETXZWQk
この解説動画で分かるが、アニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』は
制作者による拘りや仕込みが随所に見られる作品である。
背景に意図を持たせていることも少しネットで話題になったが
今回は筆者が見つけた背景の意味を紹介していくことにする。
上原歩夢は作中で唯一ソロ曲を2つ歌っている。
Dream with You / 上原歩夢(CV.大西亜玖璃)【TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第1話ダンスシーン映像】
https://m.youtube.com/watch?v=Nxr3Y7Fx-zs
Awakening Promise / 上原歩夢(CV.大西亜玖璃)【TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第12話ダンスシーン映像】
https://m.youtube.com/watch?v=oH9bVb-gEJk
舞台は同じ場所なのだが、その期間の歩夢の成長が見られるような対比がある。
1話で歌うために階段を駆け登る途中で歩夢は階段の踊り場に立ち止まる。
支えてくれて、そして捧げたい対象が高咲侑だけの一対一の近しい距離感と同時に儚げな不安が見られる。
スクールアイドルとしての"始まったばかり"の歩夢の姿がここにある。
そして12話で歌う前では、歩夢は躊躇うことなく踊り場を駆け抜ける。
自分を応援してくれて、そして"たくさんのありがとう"を贈りたい多くのファンを意識出来るまでに成長した
彼女の
自信と侑への束縛意識の解放が表されている。
2話の中須かすみメイン回の3人での会話。
侑とかすみが親しく会話している中、不自然に歩夢の表情を映さないカットが連続している。
歩夢のアイドル志望の動機が侑の存在だけで支えられて脆いことが、後々明らかになる。
そこには侑を他人に取られたくない嫉妬の表情があったはずである。
この時点で他のメンバーの話数に影響しないように、彼女の心中は視聴者に伏せられる配慮がされている。
全体的に作画レベルの高い作品だが、その中でも中須かすみは一段と作画のクオリティが高く動画も多くよく動く。
制作スタッフに優遇されてそうな彼女だが、その性格も小道具で巧みに表現されている。
知り合ったばかりなのに彼女のカバンは2人のカバンと並んで置かれている。
他人の懐に躊躇なく入ることが出来る彼女の親しみやすさの表れだ。
3話の屋上に呼び出されたせつ菜が侑と会話する場面。
彼女は同好会を瓦解させた責任を痛切に感じ、自分の居ない同好会の再生を願うまでに追い詰められていた。
奥の建物の間に出来た空間は、せつ菜と同好会メンバーとの心理的な距離である。
しかしながら侑からスクールアイドルを好きになったキッカケが自分にあることを告げられ、
更にメンバーとの衝突も良しとしてその個性も認められたせつ菜は同好会への復帰を決意する。
侑の歩みと共に、2人を収めたカメラがズームすることで奥の開いた空間は狭まり、
せつ菜が築いていた心の壁が取り払われたことが効果的に表現されている。
4話の宮下愛がメンバーの個性を尊重するセリフで、ソロ活動という同好会の方針の萌芽が生まれるシーン。
ここで、愛が手前に歩いてくる動画をわざわざ挿入しているのはかなり意図的である。
彼女の言葉が号砲となり、スタートラインのように一直線に並んだベンチから
各メンバーがソロとして羽ばたこうとしているように見えるのである。
近江彼方メイン回の7話。
彼女は妹の遥のために家事やアルバイトをして日々忙しい。
これは、そんな二人が表面上穏やかに過ごしている朝食準備の場面。
偶然なのか、これらのカットでは掃き出し窓は観葉植物で隠れている。
やがて二人は衝突する。何よりも妹を優先したいと考える彼方の過保護ぶりに、
自分は頼られていないと感じた遥が反発したのだ。
しかし、侑の言葉によって遥を一人前として扱うべきだと気付いた彼方は
自らの負担を二人で分かち合おうと遥と和解する。
その後、改めて二人で朝食を準備する場面。
今度は掃き出し窓をしっかりと正面に捉えたカットで、そこから見える空と
二人のマグカップを照らす陽射しが、二人の間に流れる融和的な空気を演出している。
桜坂しずくは、演劇の主演を降ろされたことでこれまで抱えてきた
自分を偽ることでしか人に対峙できないコンプレックスに向き合うことになる。
再び主演を目指し演技の練習に励むしずく。
後から振り返ると、彼女が本能的に太陽の光を望んでいることが分かるカットである。
彼女を励まそうとするかすみとの放課後の教室の対話の場面。
人から嫌われることも覚悟で自信を持って生きているかすみは陽に照射されている。
一方、諭されるしずくの顔は陰になってる。
非常に分かりやすい対照的な演出だが、太陽のような存在であるかすみが諭すのは説得力があり、
また他者との関わり方における自信の有無を対比する表現としてこれ以上になく相応しい。
Solitude Rain / 桜坂しずく(CV.前田佳織里)【TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第8話ダンスシーン映像】
https://m.youtube.com/watch?v=d9hGriTd7-o
演劇の舞台にはスポットライトの数だけ光が存在する。
そのライトに対応する複数の影が、普段の生活で仮面を被っている自分を表現しているのは言うまでもない。
しかし、胸の奥にある"変わらないたった一つの思い"、つまりありのままの自分を
他者に受け入れてもらいたい願いに気付いた彼女は変わっていく。
舞台が夜の情景になっても、尚も複数の影が消えないことに注目したい。
これまで演じてきた"どんな私"も受け入れていく過程が歌詞で綴られていく。
決して過去の自分から逃げたり排除したりはしないのである。
それは黒・灰・白の彼女が辿ってきた精神の軌跡とも言える三原色で構成される衣装にも象徴されている。
そして世界に一つしかない太陽の光によって、影も彼女の有り様も統合されたのである。
過去に侑の言葉で立ち直ったせつ菜が取った拳を付き出すポーズ。
彼女の立ち位置は引き気味で、遠近法の消失点も彼女から離れている。
自分の"好き"を貫く決意は始まったばかりだ。
そして12話、同じポーズは侑から離れることの不安を抱え
新たに出来たファンとの関係に逡巡する歩夢に向けられた。
今回カメラは彼女をクローズアップし遠近法の消失点は彼女の中心に置かれている。
以前とは明確に違い、これまでの経験で積まれた彼女の堂々たる自信が見て取れる。
彼女の"始まったのなら貫くのみ"という肯定が、歩夢を前に進ませようとしている。
決意は自信に、そしてエールになって
侑の言葉がせつ菜を通して歩夢に届いたのである。
侑の待つ花園のステージに駆け付ける歩夢。
枝分かれした小道は暗喩的だ。
侑の立つ道は侑と二人だけの完結した関係となってしまいスクールアイドルを挫折した分岐で、
歩夢が一人立つ道はスクールアイドルとして歩むべき輝かしい未来である。
この作品の背景と演出は、視聴者に「分からせよう」とするものではない。
それは登場人物の心情の理解を促す補助的なものである。
普通に視聴すれば無意識に各場面の印象が深められ、読み解こうとする者には解読の喜びがある。
アイドルアニメらしからぬ一級品の背景と演出が、この作品を高みに押し上げている。