本来性器ではないが、性的な意味を仮に付与されることで
性的シンボルとして男性を刺激する、それが腋である。
腋に対する考え方はファンへの姿勢と駆け引きの違いを生み、
虹色のグラデーションの如く女性声優の個性を咲かせている。
そして演じているキャラとのシンクロまで浮かび上がってきたのである。
大西亜玖璃さんと言えば声優の前にアイドル時代があって、
自身が性的な存在として見られることにも慣れているはずだ。
当然腋を見せることに抵抗は無く彼女のファッションの好みもあるのだろうが、
それにしてもこんなにも腋が大きく開いた服をよく着ているのは何故なのか。
ファンならば誰でもその彼女最大の禁忌とも言うべき理由を知っている。
それは腋汗をかきやすい体質だ。
しかし感心したのはそのことを恥ずかしがって隠すのではなく、
敢えて腋が見えるような開放的な服を着る選択をしたことだ。
それは彼女が演じる上原歩夢が侑との二人きりの関係に閉じこもることではなく、
多くのファンへの関係を築くことを選んだ思い切りの良さと決断力に相通じるものがある。
久保田未夢さんも虹ヶ咲とは別のアイドルグループで活動していて、
腋を他人に見せることに抵抗が無いのは大西さんと同様である。
しかし久保田さんと大西さんとでは決定的な違いがある。
彼女はSNSでよく女性向けのゲームに萌えている発信をしている。
そして過去のイベントでは女性声優の範疇を大きく越えた男性ファンへのサービスも披露している。
つまり彼女自身はファンとしては異性からの刺激を感じていて、
声優としては自覚的にファンに性的な刺激を与えているのである。
そんな彼女が腋を武器に、虹ヶ咲唯一のセクシー路線を担当するキャラの朝香果林を演じているのは必然なのだろう。
正直に言うと筆者は鬼頭明里さんの性格が分からない。
かつて彼女と一緒のラジオのパーソナリティを務めていた春野杏さんが「彼女は化粧の前と後では顔が全然違う」と言っていたが、
それと同じく心に厚化粧をしている本性を解き明かせないのである。
しかし彼女にはっきり感じることが一つある。
それは体験への貪欲なエネルギーである。
それを裏打ちするであろう性格の解明はこの際置いて置いて、何にでも意欲的で挑戦的なのは誰の目にも明らかだ。
新人時代には異例のへそ出しのコスプレを求められてその期待に応えている。
常に物事に全力全開で挑む彼女が腋を全開にするのは当然である。
おとなしく見えて謎の不屈の意思と粘りを垣間見せる近江彼方と鬼頭明里さんの雰囲気は重なっているのである。
楠木ともりさんの腋見せの考え方の変遷は、男性ファンの敗北の歴史である。
以前は純真無垢の少女のように腋を見せることに躊躇いも無かったのだが、
今では心と腋を閉じてしまった理由を本渡楓さんとパーソナリティを務めていたラジオ『本渡楓・楠木ともりのFUN'S PROJECT LAB』で語っている。
本渡「タンクトップとかスリーブ、肩・二の腕出る系のものが好きだけど、家ではよく着るんけど、外ではあんまり着ないかな」
楠木「うーん」
本渡「というのも、すみのりさんみたいに腋のこと言う人がいるから」
楠木「そうなの!そうなの!」
本渡「あなたみたいな人がいるから着れないのよ恥ずかしくって。だって見るんでしょ」
楠木「そうそう。本当に。そうなのよ」
男性の邪な眼差しが彼女の性の目覚めと男性への嫌悪を促したのである。
おそらく今の彼女がアーティスト路線に拘ってる理由にもなっているとも推測される。
そこにはファンが楠木さんに代わって望むアイドル路線を継承する優木せつ菜と、
男性に媚びない潔癖さを望む性格の中川菜々の対立がある。
虹ヶ咲を辞めても続く楠木さんの長期的な課題ではあるが、いつか本心からファンの期待に沿いたいと願うようになって、
彼女の中に渦巻く対立が解消されるその時には、腋も自然にファンに見せてくれるようになるのだろう。